コラム
歯周病学会に参加
休みをいただきまして、第61回春季日本歯周病学会学術大会に参加してきました。
テーマは「歯周病治療がもたらすQOL向上」
ここでは歯周病の治療について少しまとめてみようと思います。
歯周病の治療は、最初は抜歯だけが治療法でした。それが変わってきたのは、実はたかだか60年前なんです。
1960年ごろ、歯周病の原因はプラーク(歯垢)と歯石といわれるようになり、徹底的にその除去を行い、多くの場合、劇的に改善しました。しかし、プラークの付着がそれほどでもなく起こる歯周病もあることがわかってきました。
1970年ごろ、歯周病は歯肉縁下のポケット内に生息する特異な細菌によって起こるのではないかと言われるようになりました。
1980年ごろ、歯周病の病因論は宿主(人)と細菌、の時代になりました。個々の細菌も重要、細菌に対する宿主の反応も重要ということです。
1990年ごろ、遺伝、環境、後天的リスクファクターがはっきりするようになりました。
1990年代後半、歯周病と全身疾患との関係が言われるようになりました。
2011年~ ディスバイオシス仮説が提唱されました。日和見感染と同じようなコンセプトです。
2012年~ キーストーン病原体仮説が提唱されました。少量の特定の病原性細菌が宿主免疫システムを阻害し、細菌叢のバランスを変えることによって炎症疾患が引き起こされることを意味します。
歯周病の病因論を理解せずに、ただ目の前のバイオフィルムと向き合うだけでは、歯周病を治療・管理することはできません。病因論に立脚した治療こそQOLを向上することを学びました。
個人的には歯周病の認定医取得の準備をしているところです。これからも歯周病の発症抑制、治癒改善を目指し、日々診療に取り組みます。
副院長 久保 慶朗